真田丸 第一回「船出」感想 真田丸、漕ぎ出す

真田一族は一艘の船。その名も真田丸
その船はいったいどこへたどり着くだろう。

OPは重苦しいくらいの重厚さと、華々しい赤色が印象的だった。

真田丸 第一回「船出」
遅まきながら一話の感想を。

信繁、登場

物語は徳川の軍勢を偵察する信繁から始まった。
お付の三十郎は信繁を止める。
「見つかったらえらいことですぞ!」
「見つからなければよいことですぞ!」
いきなりの顔芸。
今年の大河は力を抜いて見ていいのかなと、錯覚させるような場面。
見つからなければよいと言っておきながら、敢え無く見つかる信繁は、
必死に逃げる。
今は逃げるしかない彼は、しかしのちに赤い軍勢を率いて
徳川のものと戦うことになる。

武田は軍議を開いていた。
武田信玄、戦国でも知名度の高い武将のその息子・勝頼は、
武田を滅ぼしたというその最後がどうしてもつきまとう。
しかし、真田丸においてその姿は凛々しくあった。

真田家

武田の会議から帰ってきた兄に、信繁は偵察結果を報告する。

厳しく真面目な兄と、奔放で天才肌な弟。
種類の違うこの二人がいい関係であることは
このやり取りだけでもよく分かる。

 木曾義昌の裏切り、それによって奥方やお子達は処刑される
母・薫は怯え、昌幸に「殿は裏切りませんよね?」と問う。
ここの一連の家族のやり取りは、彼らが武田の人質として
油断できない状況におかれていることを示しつつも、
微笑ましさがあり、戦国の世にあっても、
家族同士の間柄は遠慮がない良好なものであることがわかる。

 武田の滅亡

「武田は滅びるぞ」

家族一同からはなれ、嫡男と次男にだけ告げられた、
身も蓋もない父の言葉に兄弟は愕然とする。

父の真に迫る言葉に、新府との別れを実感し、
郷愁とともに新府を眺める信繁らは、
昌幸と勝頼、穴山梅雪の一行を発見する。
武田信玄と己れを比べ、自嘲する勝頼を昌幸は励ます。

「富士か浅間の山でも火を噴かぬ限り、武田家は安泰です」

力強い昌幸の言葉に対抗するように浅間山が噴火した。
噴火という実際のエピソードを
こんな味付けで使うダイナミックさ、痺れる。
呆然とする父、なぐさめる信繁。
どこかまだ呑気な真田家に対し、勝頼の顔は暗い。

 そして穴山梅雪が裏切る。
武田の柱が抜けてしまう事は、武田のすべてが敵方に漏れること。
負けを覚悟する小山田と跡部に対し、昌幸は勝頼に宣言する。

「武田の柱はもう一本ある」と、
しかし、その柱も家族の前では
「武田は滅びる」と確信する姿を見せていた。

武田勝頼と真田兄弟

 昌幸の進言で一度は岩櫃へ行くこととなった勝頼だったが、
小山田と跡部は昌幸に従うことに反対する。
彼らにとって、真田は新参者、信頼できない。
何より武田信玄の象徴の土地、甲斐を離れるなどと
その言葉に勝頼は考え込む。

甲斐の土地、山梨では今でも信玄公祭りが開かれるなど、
武田信玄への思慕は大きい。
当時の信玄の記憶近い彼らにとっても、甲斐は大切な土地だっただろう。

そのようなことなど知らない昌幸は岩櫃に先に立ち、
真田家では信之と信繁が山崩しをしながら、語り合う。
無邪気に楽しむ信繁と堅実に行こうとする信之。
ここでも兄弟の態度の差は明確に描写されている。

そこに勝頼が現れる。
小山田、跡部の言葉に従い、
岩櫃ではなく岩殿に向かうことを勝頼は決断。
そのことを、真田兄弟に伝えに来た。

「武田家を思う安房守の言葉に嘘はなかったとわしは信じておる」

「武田は滅びる」とまで宣言した昌幸。しかし確かに昌幸は
このときまで、勝頼側から別れを告げられるまで、
勝頼を裏切らずに動き続けていた。

勝頼もその思いを信じ、彼が岩殿を選んだのは
甲斐を離れないためだと告げた。

「信玄公はもうこの世におられません」

勝頼の決意に、信繁は叫ぶ。
ともに岩櫃に行こうと、信繁は勝頼を説得する。
信繁の心からの言葉であり、設定上15歳という
その幼さも感じさせる言葉だった。
偉大なる父を思う勝頼の姿の悲壮な部分が、
信繁の眼にどう映ったのか、よく表れている場面だった。

「新府はなんだったんでしょうねえ」
兄に漏らした信繁の軽い言葉は、
尊敬する父の注力が無駄に終わったことへの
彼なりの口惜しさも感じられる。

 その翌日、慌ただしく移動の準備をする真田から、信繁は姿を消す。
遠くから、武田の軍隊を見送る信繁、それに気づく勝頼。
このシーンの美しさは筆舌しがたい
信繁と勝頼と今生の別れだった。

 戦国の世

勝頼を見送る信繁が美しいが故の名場面だとすれば、
泥にまみれた名場面が小山田茂誠が勝頼を追い返す場面だろう。

小山田茂誠は気のいい真っ直ぐな男だ。
裏切りなど思いもしていなかった。
しかし、茂誠は苦しみに耐えながらも、勝頼を追い返す。
この時代、棟梁の命令はそこまで重い。
棟梁の命令と主君への思い、板挟みになり、苦しむ茂誠の姿は、
戦国を真っ直ぐな人間が生きる厳しさを一話からこれでもかと刻み付けた。

勝頼はゆくあてもなく、岩殿に背を向ける。

真田の一族も、野盗に襲われ逃げる。
武士と言えど人は人数と地の利をとられれば追いつめられる。

まとめ

真田家の大きな転機、しかしもしかしたら信繁個人にとって
これはまだ大きな転機と言い難いかもしれない。
彼の周りの人々は多くの困難に苦しんでいる。
彼にはまだ、己れの思うままに動く余裕があるように見える。

景勝(イケメン)北条(茶漬け)徳川(爪)魔王(魔王)と
一癖も二癖もありそうな面子も勢揃いして、
これからが楽しみになる一話だった。

次回 真田丸 第二回「決断」

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  第一回から第三回までを見た感想

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