真田丸 第二回「決断」感想 父の姿

 真田丸は歴史の大海原に漕ぎ出した。
彼らは何を決断するのか。
そして痛恨の裏切りを受けた勝頼の行く末は。

真田丸 第二回「決断」。

逃げる真田家

1話でモブに襲撃されるも、何とか逃げ切れた真田一族。
先週、信之は馬に乗っていたはずなのに歩いている。
どさくさに紛れて逃げられたのだろうか、
と思っていたら、松が馬に乗って帰ってきた。
どうやら松が辺りを確認してきたらしい。
真田丸の女性はなかなかどうして逞しい。
安心して歩き出した一行だったが、
たちまち野盗に囲まれてしまう。
「隠れていたら見つけられないじゃない」と姉。
「隠れているのを見つけるのが斥候です」と返す弟。
何故、この姉に斥候など任せてしまったのか。
まったくもって謎である。
(4話で姉上ならいざとなったら馬に乗れるという趣旨の発言があった。
そのための伏線だったのかもしれない)

一度は乱戦になる一行だったが、
野盗の狙いがあくまで兵糧と気づいた彼らは
母・薫が大事にしていた着物などを放り投げて、
なんとか危機を切り抜ける。

その後、百姓に紛れようと自ら泥に塗れる一行。

「母上は高貴なお顔立ちですから丹念に塗らなければ」

褒めてなだめすかすことで母の顔に泥を塗る信之。

 武田の滅亡

一方の武田勝頼は多くの兵に逃げられ、
とどめに小山田信茂に裏切られ、
抵抗むなしく追いつめられていた。

もはやこれまでと最後まで付き従った跡部介錯に、
腹を切る直前に勝頼は父・武田信玄の姿を見る。

何も語らずただ静かなまなざしで自分を見つめる信玄に
勝頼は子供のように告げる。

「四郎をたっぷり叱ってくださいませ」

真田丸は「通称」を活用している。
一話で順番が逆転している真田兄弟の通称に言及し、
家族の中で二人は源三郎、源次郎と呼ばれている。
それはこの最後の場面で勝頼に、
自身を四郎と呼ばせるためだったのかもしれない。
そう思うくらい胸に迫る渾身の場面だった。

 偉大な父を最期まで背負った勝頼。
真田兄弟にとっても父は大きい存在だろう。
彼らがどう折り合いをつけていくのか、気になる。

同じ頃、真田昌幸も信玄の幻を見ていた。
武田は滅びると断言し、
真田が生き残るための準備をしていた昌幸。
しかし昌幸も武田信玄のことを慕い、
勝頼の信じた通り、
武田を思う気持ちにも嘘はなかったのだろう。

家康の苦悩

勝頼の死と武田の滅亡に、敵の筈の家康も渋い顔をする。

「武田が滅んだのにちっともうれしくない」

下剋上等の戦国時代、父の跡を継いだ子供が失脚する例は
あまたある。豊臣家の最後など悲惨なものだ。
だからこそ十五代も続く幕府を開くこととなる男が、
多くの家臣から裏切りにあい、
父を超える事叶わず死した勝頼と
彼と共に滅んだ武田家に沈む様子は、趣深い。

 武田の「遺臣」たち

なんとか逃げ延びた信繁たちは、
途中、裏切り者・小山田家の手の者に
襲われるハプニングもあるが、
岩櫃から駆け付けた父の助けもあり、
何とか無事に岩櫃にたどり着く。

颯爽と駆けつけた昌幸はまさに、
一族にとっての「ヒーロー」だった。

そして彼らも勝頼の死を知らされる。

その頃の織田陣営。
武田の裏切り者、穴山梅雪に会うのを
身内の前では嫌がっていた家康だったが、
実際の対面では人当たりよく接する。
のらりくらりと彼らしい渡世の仕方だ。

しかし穴山梅雪が表向きは歓迎されている一方で、
同じく裏切り者の小山田信茂は織田家の嫡男、
織田信忠に詰め寄られていた。

木曾義昌や穴山梅雪は織田側から誘った、
小山田信茂は信長への恐怖で自発的に裏切った。
その差を突き付けられ、
勝頼の首桶を見せつけられながら、
小山田信茂は処刑のために連行されてしまう。

父の決断

合流した真田一族は、
これから先の展望について語り合う。

北条にも上杉にも、昌幸はひそかに通じていた。
飄々という父について行けない信之に、
昌幸は北条につくか、上杉につくか、
色を付けたこよりがあるからどちらかを選べと迫る。

「このような大事なことをくじで決めるのですか!?」

一度は躊躇う信之も、素直に父の言うことに従い、
こよりに手を伸ばす。
しかし、父が差し出すこよりは揺るがない。

「このように大事なことをくじで決めていいものか」

信之に選べと自分で言っておきながら、
そう呟いて、二択のこよりを火中に投じる昌幸。

「わしは決めたぞ!」

と何度も大声を上げ、兄弟・視聴者を引き付ける。
そして彼が明かす彼の「決断」は、

 「織田につく」

 狂気の笑みにも見える父の笑顔。
あんぐりする次男。
呆然とする嫡男。
濃い絵面のまま次週へ続く。

まとめ

決断を誤った勝頼と小山田信茂
ここで終わってしまった。

決断一つで大きく変わる、それがこの戦国時代。

その中で、昌幸の決断は大きな決断だった。

主君を失った真田家は、
それでも自分たちを守らなければならない。
そのためには、自分たちだけの力はあまりに弱い。

近隣の強い武将、上杉、北条、そのどちらでもなく、
急成長を遂げた織田信長を選ぶと昌幸は決断した。

昌幸の決断に、はたして真田の人々はどうするのだろう。

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