完結したソウルキャッチャーズをネタバレにならない程度に紹介する

週刊少年ジャンプH24年25号から連載が始まった
異色の音楽漫画「SOUL CATHER(S)」(通称ソルキャ)。
原作は神海英雄。

週刊連載→NEXTでの隔月連載→ジャンプ+で週刊連載という
連載形態も漫画本編も怒濤の勢いで駆け抜けてきた同作品が
2月14日のジャンプ+の更新をもって円満終了してしまった。
ジャンプ+でネット連載になってからは、
毎週日曜の朝のお楽しみとなっていたのでとても寂しい。

3月4日の最終11巻と小説3巻の発売の前に紹介したい。

既刊10巻以降、11巻の内容は少年ジャンプ+で公開中だ。

 ざっくりあらすじ

ソウルキャッチャーズは指揮者志望の少年・神峰翔太が、
鳴苑高校吹奏楽部で全国金賞を目指すお話だ。

その最初の動機は、
子供の頃のあこがれや廃部の危機ではなく、
全国に競いたい相手や勝ちたい相手が居るとかでもなく、
吹奏楽は…お好きですか?」ときかれたわけでもない。

同学年のサックス奏者・刻阪響にダメ金*1続きの
吹奏楽部の「指揮者になってくれ」と頼まれたからだ。

というのも、神峰翔太は人の心が見える。

彼の「心が見える」というのは、
相手の考えが分かるとか、心の声が聞こえるとかではない。

”心が冷たい””心が狭い””心を閉ざす””心が汚れる”

「慣用句って見えないものをウマく喩えてるよね」
とか 皆言う

オレは全然そう思わねェ…

だって 本当に そう 見えるんだ

SOUL CATCHER(S)第一巻)

作中の神峰の独白にあるように、
彼の目には人の心の様子がはっきりと見える。

「心が見える」というこのアイデアは、
マンガという絵媒体の作品ならではで、
個性豊かな動作や形の「心」たちが神峰の視点から描かれている。

それまでの神峰は人の心に関わって、
いい方向に持っていきたいと願ったこともあった。
しかし、その試みは悉く失敗。
見えていても変えられない現実に、
自分の目を潰してくれと願うまでになっていた神峰だったが、
刻阪のサックスの演奏により人の心が変わっていくのを目撃する。

神峰がそれまでどれだけ望んでもかなわなかった光景が、
そこにはあった。

心を揺さぶる刻阪の音を、
心が見える神峰の目で導けば、
二人は最高に心を揺さぶる演奏ができる。

そうして神峰翔太は「何か大きな壁に阻まれている」
吹奏楽部の問題に、刻阪響とともに挑むこととなる。

「心」

神峰に見える心は様々で、

悲しみの海におぼれかけている人を救助したり
あえて子供を千尋の谷に落とす獅子が出てきたり、
刃物と化した心でぶった切られそうになったり、

見ている神峰が汗だらだらになるものばかりだ。

そのある種「何でもアリ」な世界観のおかげで一巻の表紙は、
異世界にとばされた学生たちの物語かと見まごう出来だ。

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キャラクター

神峰に助けてもらってキュンとしちゃうヒロインとか
神峰と同じく指揮者として全国目指しているライバルとか、
世界的指揮者なおじいさんという師匠的な人とか
なかなか心を開いてくれない四天王とか、

少年マンガな人々も続々ととがった個性を携えて登場する。

音楽

ときには既存の曲とあわせた演奏シーンは見物で
是非当該曲を聞きながら読んでみてほしい。

吹奏楽は特に関わりなかった私でも楽しめた。

吹奏楽の定番曲から、みんなが知っているあのJ-POPまで
話の流れと曲の内容を合致させる力は吹奏楽経験者の作者ならでは。

漫画の内容

絵はところどころ粗削りに感じるところもある。
しかし「前から華やかさはあったけど」と帯に寄せられたように、
読む人を引き付ける力強さを持っている。

キャラクターたちは熱い。むしろもう暑苦しい。
だからこそ心を打つ。

複雑で面倒くさい人の心を取り上げるため、
その心理描写の面白さは輝いている。

まとめ

作者コメントでは「苦悩を通して歓喜に至る」物語であると
表現されていた。
それを体現した最終回が読めたことは望外の喜びだ。

終ってしまうのは名残惜しいけれど
惜しみない拍手を送りたい作品となっているので、
機会があったら読んでみてほしい。

人気声優さんによるVomicもある。

vomic.shueisha.co.jp

SOUL CATCHER(S)とは編集

 

*1:全国への代表枠に入れない。金賞の中の下位