真田丸 第九回「駆引」 真田父子、悩む

春日の凄惨な死に、片棒を担いだことになった信繁は落ち込む。
しかし信繁少年の悩みを近隣との駆け引きに忙しい真田家の大人たちは聞いてやる暇などない。

真田丸 第九回「駆引」。

三大名の動向

前回に引き続き、三大名の動きの描写から始まる真田丸
大きな時代の流れのただ中に真田家がいることを忘れず描写していきます。

北条は家康を甲府に追いつめる。
鷹に餌をやりながら「家康もこれまで」とほくそ笑む。

この鷹が今週は要所要所に出現。
俯瞰者のような目で戦局を見つめます。

一方、北条に追いつめられて焦る家康は相変わらずうろたえています。
忠勝は真正面から挑もう、それしか策はないと献策するが、それは策とはいえないと突っ込まれる。
追いつめられても、ほのぼのさが隠せない徳川陣営です。

一方、新発田の反乱を制圧するためいったん引いていた上杉陣営。
昌幸に裏切られ、さすがの景勝もお怒りだった。
兼続も信伊を逃がしてしまい、そちらを気にする。

三者三様の大名たちが、真田一族の信濃の周辺に展開していた。

武田家家臣、企む

当の真田一族。

思い付きだけで生きているのではないかと不安に思ったこともあるが父上の行動はやはりお考えあっての行動なのだと絶賛する信之に対して、信繁は春日の死を忘れられずふさぎこんでいます。

そして見事に犠牲を(春日以外)払わず自陣に戻った昌幸が、北条の援軍要請には上杉が来たと言い訳をしようと、相変わらず信頼のしの字もない策を立てていると、出浦が口を挟んできました。

信濃の大名にならないのかと、進言する出浦に、自分には無理だ分不相応だ、武田の旧臣も納得しない、と今更のように他人の心情を気にしてみせる昌幸。

信之は相変わらず実直に父を後押しし、出浦もここでは折れる。

そして信之は口を開かない源次郎を心配したのか水を向け、出浦も機嫌が悪いのかと問うが、昌幸はこともなげに自分が気に食わないのだと説明する。
他に手はなかったのか、春日はああも喜んでいた。
青臭い信繁に、その道しかないと昌幸はにべもなく、信繁は大人の汚さに怒って退室してしまいます。

会議を終えた出浦は信繁に声をかけます。
出浦は自分は昌幸に信濃を治めてほしいと思っていることを改めて述べ、そして春日の不忠という非を説きます。
しかし春日が非を選択するように導いた信繁は、出浦の慰めにも何も言いようがありません。

顔の気に入らない室賀の説得に向かう真田家一行。
室賀はあっちについたりこっちについたり節操のない昌幸に次は北条を裏切れというかと一度は怒って見せますが「武田家」の人間として、仕えるに足る人がいないと昌幸に同調します。

「実に面白い」とガリレオのようなことを言って、室賀は初めて昌幸の考えに乗ることを決意。
心強いと昌幸。
喧嘩ばかりしていた真田と室賀が手を組みます。
そうして黙れ小童も封印されてしまいます。

信繁、悩む

その頃、信繁は自室でふて寝をしていました。
父・内記から発破をかけられたきりが饅頭を食べようと誘います。
しかし信繁はそれを無視して立ち去ってしまいます。

体育座りで山を眺めていると作兵衛を発見。

何があったのかと問うと、隣村の百姓とまた諍いがあったと作兵衛は語ります。

そして作兵衛も武田の頃を懐かしく思っていることを吐露。
昌幸に信濃を治めてほしい。

強い指導者を失った彼らには、新しい指導者が必要なのです。

作兵衛の傷に気付き、いつになく幼く頼りない表情をしていた信繁が印象的でした。

作兵衛の家に行き、信繁は梅と語り合います。

信繁が帰ってきてくれてほっとしている。大切な人を送り出すのはつらい。戦は嫌という梅。

同じく作兵衛も、殿のために戦うのはよいけれど、畑仕事をしている方がほっとする。

信繁に、梅は問いかけます。

「戦は勝てばいいのか」

戦になれば人が死に、田畑が荒れ、生活が困る。
梅の言葉に、信繁は春日の死という凄惨な目の前の出来事で覆い隠されていた、戦を回避できたメリットに気付かされます。

梅のいのちを守れるような侍になる。

信繁は改めて決意し、梅は信繁自身の命もと答えます。

お邪魔虫の作兵衛は、わしはいいよといったん辞退しますが、妹に兄様の命もと言われ嬉しそうな顔をしてから、若い衆と寄り合いがあったと突然出て行きます。

こうして梅と二人きりになり、だいぶ夜が更けてからうきうき気分で帰ってきた信繁でしたが、彼は自室で無残な饅頭の姿を発見してしまいます。

戦局

北条氏直は持っている杖をくるくる器用に回しながら真田と国衆が来ないことにぶち切れていました。

小県では極秘の会議が開かれていました。
室賀と昌幸がたくらみを明かし、力を貸してくれと国衆に言いますが、彼らは渋い顔。大博打におおむね失敗している昌幸と心中したくない気持ちは分かります。

あまり派手に動いては北条に気付かれると忠告する信之に、「黙れ小童」が炸裂。

そのまま退室した室賀は、信繁と行き会い昌幸の顔が好かんとぶっちゃけます。
父も同じだと思いますと無礼な返答をする信繁を気にも留めず、室賀はしみじみと語ります。
声をかけてくれたことは嬉しいと。
信繁の肩を優しくたたいて去っていく室賀。

武田の家臣団はなんだかんだで信繁に優しい人ばかりです。

一方の、出浦はまたも昌幸に大名になることを薦めていました。
出浦と父の間に「父は心を決めています」といいながら割って入る信之でしたが、「いや、そうでもない」と昌幸にはしごを外されてしまいます。
相変わらず信之は昌幸の考えを読み切れていませんし、昌幸は信之の言うことの逆をいってばかりいます。

そして少し考えると、昌幸。
出浦の再三の口説き文句に揺れ動いているようでした。

そして信繁は梅と話して心に余裕ができたのか、きりとようやく話をします。
あれはいい子だと信繁、梅と自分とのことで起こっているのならおかしなことだ、信繁ときりとの間には何もないのだから。
きりがツンデレで分かりにくいからとはいえ、あんまりにもあんまりな言葉に、きりは思わずまんじゅうを投げてしまいます。
戦が起こると人が死ぬし田畑も焼かれる食糧の奪い合いになる、と心配していた梅と比べるとあまりに幼く、食料を無駄にする振る舞いです。
梅は隣村とのいさかいでは石を投げていたので、きりは戦闘力ですら負けています。
はたしてきりに巻き返しの道はあるのでしょうか。

父の決断

信玄公の代わりなどいない。
どの大名についても信玄公ほどは頼れなかった。
信玄公の頃が懐かしい。
春日に対しては調略の材料として使われた「武田の旧臣」としての真田の立場ですが、昌幸の心の中には確かに武田信玄が存在しています。
それは二人の息子にも見せないほどに大きなものです。
武田を任された勝頼は信玄に憧れ、信玄に押しつぶされ武田を滅ぼしましたが、武田を失った昌幸もまた、信玄を求めています。
武田の滅亡の折に、信玄の幻を見たのがこの二人であったのも分かる気がします。

悩む昌幸はそのまま朝を迎え、誰かの足音に目を覚まします。
御屋形様!?と扉を開ける昌幸でしたが、そこにいたのは息子・信之。

すこし未来にこの地を治めることとなる男が、同じくすこし未来で日の本を統べることとなる徳川家康からの書状をもってきました。

徳川家康からの救援の依頼。
負けそうな方に恩を売ろうと昌幸は決断。
また始まったかと呆れる出浦に、昌幸は腹をくくったと宣言。
とたんに嬉しそうな顔になり、改めて出浦は家臣として名乗りを上げました。

国衆との寄合はどうするのかと慌てる信之にそれは諦めたとこともなく言い放つ昌幸。
つくづく信之は苦労性です。

そして上杉からまんまと逃げてきていた信伊は続いて家康との使者を命じられ、それを受けます。

諏訪と甲斐の所領、そして沼田を求める真田信伊に、家康は太っ腹なところを見せ承諾します。

ナレーションでは“つい”約束したなどと言われていますが、このことがどう絡んでいくのでしょうか。

徳川との交渉が成立した昌幸は薫と語り合います。
そのための膝だと薫に膝枕をしてもらい、久しぶりに仲睦まじい夫婦の会話が見られた、と思ったのも束の間、徳川に人質を求められたと言い出す昌幸。
もちろん薫は怒り狂って拒否。
「おやすみなさい…」と消え入りそうな声で去る昌幸はお母さんには弱いお父さんそのものでした。
とりがいない今、昌幸に本気で怒れるのは薫だけなのでしょう。

 戦の始まり

北条氏政は笑いながら怒る人の真似の如く怒りますが、雑魚は放っておこうと宣言。
それが自分の敗退を招くとも知らずに徳川との戦に専念します。

盛り上がる国衆と室賀に、「もう少し黙っていよう」と室賀が信繁に語った感動を台無しにする昌幸。

そして国衆たちとの会議が始まります。

定石でいえば内山城をと発言する信之。
国衆たちも賛同しますが、そこに源次郎が異議を唱えます。

申してみよと促され、彼は自身の考えを語ります。

内山城で攻めては戦が激しくなってしまうと、信繁。
それでもかまわないという叔父の矢沢を制し、信之は信繁が考えを述べることができるようにさらに促します。

北条の戦列が伸びきっていることを突き、小諸城を拠点に兵糧を襲う策を提案する信繁。

よい策だと褒める兄と父。
策に乗る国衆たちの戦への高揚とは他に、一皮むけた次男坊に真田の面々も嬉しそうな顔をしていました。

こうして信繁の決断と成長により生まれた策で、北条軍に大打撃を与えられ、徳川軍も無事、優勢に立つのでした。

よっしゃー!と大声を上げて喜ぶ家康を鷹も見つめます。

和睦

北条と徳川が潰し合ってくれると安堵したのも束の間、徳川と北条は和睦を結んでしまいます。

ええッ?!と声をそろえて驚く兄弟は可愛いのですがそうも言っていられません。

昌幸の裏切りまくりの人生にさらなる困難が立ちはだかりますがほぼ自業自得なのが同情できないところです。
いちおう苦悩しているはずなのですが。

まとめ

真田家は自分たちの駆引のさらに上を行かれてしまいました。

だいぶ濃い絵面で成立した北条と徳川の和睦。
武田の滅亡、信長の死などの大事件と同じ年のいちごぱんつの1582年の出来事だというから驚きです。

今回見事に策を成功させた信繁。
彼が声を上げたときの、信之の嬉しそうな顔も印象的でした。
凸凹兄弟がお互いを支え合う形というのが初めて成立した瞬間かもしれません。
信繁少年がこれからいくつの挫折と成長を遂げることになるのか目が離せません。

来週は信繁はもちろん、室賀さまに怒鳴られまくって恫喝には慣れた信之もがんばる模様。頑張れ真田兄弟。

次回、第十回「妙手」。私にいい考えがある!

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前回、第八回「調略」

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