真田丸 第十三回「決戦」 六文銭

信繁青春編の終了にして、六文銭の登場。

「死にざまは生き方を写す鏡」

前回の景勝の言葉が重くのしかかる13話です。

 

真田丸 第十三回「決戦」

 戦の準備

兼続が真田に用意してくれていた援軍はまさに寄せ集め。
一見、兼続の嫌がらせとしか思えない光景ですが、これが上杉の懐事情の厳しさを反映しているのかと考えると涙が出そうです。
このものたちを死なせるわけにはいかないと、彼らを残して出立する源次郎と三十郎。

 一方、徳川家では忠勝が家康に不満を漏らしていました。
「む~」と、子供か!といいたくなるような拗ね方をする忠勝。息もつかせぬ合戦の一服の清涼剤でした。

そして作兵衛も農村の仲間たちとせっせと城内の守りを固めます。
昌幸が考え抜いて、家康にお金を出させた砦が完成しようとしていました。

そこにおにぎりを差し入れにあらわれる梅ちゃん。
真田の次男坊の側室となっても彼女は変わらず兄の補佐をし、よく働きます。

そんなできた嫁とはうらはらに沼田などやってしまえばいいと真田の城にこもりながら薫は愚痴ります。
そんな嫁をこの戦は勝ちそうな匂いがするとなだめるとり。
さすが経験豊かなばばさま!と感心したのも束の間、おこうさんの質問によって、とりさんは戦に立ち会った経験がないとすぐばれます。
堂々としたはったり、さすが昌幸の母です。
源次郎や昌幸と違って、薫さんを丸め込むこともできるとりさんですが、何が違うのでしょう。性別?年の功?

戻ってきた梅はすえに乳をやろうとして、薫にアドバイスを受けます。
源次郎不在の間に、すえを通し、薫と梅も仲よくなっていたようです。
子は鎹とはよく言ったものです。

一方、多勢の徳川家をどう迎え撃つかと算段を立てる中、餅をひきちぎる昌幸。
こうやって分断すれば、徳川にも勝てると力説しますが、布陣を差配するまでには至らず、手が汚れたと中座します。
フリーダムです。

布陣は描いているが、駒が足りないと歯痒げな昌幸に、いざとなれば自分が敵陣に突っ込んでやると頼もしい出浦。

そこに源次郎信繁登場。戦に間に合いました。
本当に景勝も羨むよき息子っぷりです。まさに『安房守も心強いだろう』です。

源次郎という駒を加えた真田家は百人力。
昌幸も生き生きと布陣を差配します。
後ろに控えていた作兵衛が昌幸に呼ばれて嬉しそうに指示を受けているところが微笑ましかったです。
立っている者は下っ端でも分け隔てなく使う。昌幸の合理的な姿が光っていました。

 家族の団欒

帰還した信繁はようやく我が子を腕に抱きます。

赤ん坊を扱うのにはらはらしている信繁。
兄夫婦にも姉夫婦にも子供がいなかったので、赤ん坊と接するのは慣れていないようです。

そして源次郎が帰ってきたのを喜ぶとり。
薫をなだめながらも、とりも不安を感じていたのだと思わせるほっとした顔をしていました。

家族が一丸となってこそ強さを発揮できる「真田丸」のテーマがそこに垣間見えます。

源次郎の帰還を知り、城に帰ろうとする梅は、一人泣きじゃくる少年を発見します。
泣く少年が欲したのは、家の中にあったお守り、六文銭
何故かそれを欲しがる梅。
懐から銀を取り出してまで、それと交換してもらいました。

その隙にすれ違ってしまう源次郎と梅。
なんとも不気味な瞬間でした。

帰ってきた源次郎はきりが梅から預かっていたものを手渡されます。
それは六文銭
真田の雁金と並ぶ家紋であり、その意味は「地獄の渡し賃」。
死を恐れず戦えと言うエールと受け取り、源次郎は喜びますが、きりは「縁起でもない!」と主家の家紋に対してずいぶんな言いぐさ。
しかし素直なきりちゃんの忌避感。
この彼女の気持ちが正しかったのではないかと思わせるような展開が後半、くりひろげられることになります。

そのまますれ違う。梅と源次郎。
邪魔になるだけだからと梅は源次郎との再会をいったん保留します。

戦の始まり

そして夜明けとともに戦を仕掛ける昌幸。

伝令・佐助の合図で、六文銭を描いた旗を振り始める信繁。
朗々と「高砂」を歌いながら、対岸の徳川を挑発します。
上杉との狂言合戦のときといい、合戦場は演舞場か何かなのかといいたくなるようなパフォーマンスです。
合戦を見学していた農民がいたみたいな話もある辺り、あながち間違いでもない気も。

信繁のこの不思議な踊り。延々続きます。めっちゃ楽しそうです。
真田家伝来、雁金踊りに続く六文銭踊りとでも言いましょうか。

昌幸の描いた絵図通り、城内まで徳川方をおびき寄せる信繁軍。
作兵衛たちがせっせとこしらえた仕掛けもあり、順調に徳川軍の数を減らしていきます。
物陰から刃物、足元にマキビシ、上から熱湯。
昌幸の性格の悪さがこれでもかと発揮された恐ろしいトラップマップに徳川の兵はボロボロです。

その間、梅は兄と戦に備えていましたが、乳が張ったことで、すえの食事の時間だと城に戻り、結局、戦の始まりには立ち会えませんでした。

そして、すえのためにも傍にいるべきときり。
すえを守るために戦いに出ると梅。
平行線な議論を振り切り、飛び出そうとする梅を呼び止めるようにすえが泣き声を上げましたが、梅は飛び出します。

ここでも敵兵を引き付けるので精一杯な信繁と、梅はすれ違い続けます。

戦の盛り上がり

ようやく再会できたとき、梅の身には危機が迫っていました。

頭が真っ白になったように、動けない源次郎。
2話で敵を切り損ね、一族のためだと叱責された以来の姿かもしれません。
源次郎は大切な人を守るために強くなれるタイプではないのかもしれません。
なんとなくそう思いました。

三十郎と佐助により、助けられた梅と源次郎。
そして、門の前で源次郎は最後の大仕上げ。

開門と同時に、登場する昌幸。
一族の頭領たる昌幸の堂々とした姿は神々しいくらいです。
飛び道具をフル活用し、徳川の軍隊を追い詰める真田軍。
その動きに呼応して馬を駆る信之。
真田家がそれぞれの力をもって、時の覇者・秀吉を退けるほどの徳川の軍隊に対抗します。

皆と戦えなかったと不満げな梅。
そんな梅に、呆れた様子できりはすえを抱かせます。
いいからこの子を大切にしなさい。おっかさん。
そんな気持ちが滲んでいます。

戦のおわり

出浦と佐助。忍びである2人は徳川にとどめをさしにかかります。
堰は切られ、川が氾濫。
これによって徳川軍の逃げ場は断たれます。
重ねに重ねた罠で、嬲り殺しにされる徳川軍。

もう戦などというものではないと高見から嫌悪感をあらわにするきりのそばで、梅も何かに心動かされた顔をしていました。

徳川方は惨敗。真田家の圧倒的勝利で合戦は終了。

勝鬨が響き、源次郎もほっと一息つきます。

すべてが昌幸のもくろみどおりうまくいったのだ。
誰もがそう思っていました。

城内を見て回っていた源次郎は柵が壊されていることに気付きます。
徳川の兵が逃げ道として選んだのだと悟り、急いでその先に向かう源次郎。
彼がそこで見たのは傷つき倒れる作兵衛の仲間たちの姿でした。

梅は城に戻っているはず、戻しておいてよかったと作兵衛と安堵したのも束の間、すえを抱えた、こわばったか顔のきりが現れます。

城から作兵衛たちのもとへ敵が進んでいることに気付いてしまった梅が、こちらに向かってきたと言うのです。

慌てて梅を探す源次郎と作兵衛。

そして響く作兵衛の声。

源次郎が見たのは、物言わぬ梅でした。

泣きながら彼女を抱きかかえる源次郎。

すえを抱き、その光景を目に焼き付けるきり。

初恋の人の死と共に、源次郎の青春編は幕を閉じます。

梅の行動

源次郎の子を宿したと言う賭けのような嫁入りの方法。
子供を宿してお腹が大きくなってからでも畑仕事。
梅という人は、策を巡らせる頭の良さを持つと同時に、たとえリスクがあっても動かずにはいられない。そういう人間に見えます。

もともと隣村との争いにも参戦するような育ちの梅。

兄と助け合って、守りあって、懸命に生きてきた彼女にとって、城の中、じっとしていることは「生きている」状態からもっとも遠い状態だったのかもしれません。

信繁の側室になれても、その本質は変わらない。
彼女の死にざまは、そういう生き方によるものなのではないかと思います。

まとめ

 徳川の1300人の死に対し、真田は微々たる50人の死。
しかしその中には信繁、作兵衛、きりの愛した梅がいました。

犠牲の上に成り立つ平和。それが戦国の常なのでしょう。

春日の死、室賀の死、それに並び立つような象徴的な梅の死でした。

梅を守れなかった信繁。梅を止められなかったきり。
青春時代を喪った彼らはこれからをどう戦いぬくのでしょう。

 

 次回、真田丸 第十四回「大坂」
満を持しての豊臣秀吉、本格登場です。

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前回、真田丸 第十二回「人質」

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