真田丸 第十五回「秀吉」 源次郎、秀吉に出会う

和やかな大坂。騒がしい上田。二つの家族。
どちらの家族も知る源次郎は、家長の秀吉をどう思ったか。

真田丸 第十五回「秀吉」

関白秀吉

黒い大坂城に圧倒されていた源次郎は、秀吉と初対面を果たします。
騒がしい様子で屏風の裏に隠れる秀吉。
おおよそ天下人とは思えない気さくさで、秀吉は源次郎を外へと連れ出します。

秀吉の外出を嬉々として助ける福島正則、知っていて腹が痛そうな片桐且元、まかれても淡々とことを片付ける石田三成
家臣たちの三者三様の秀吉への反応も面白いです。

上杉との約束をすっぽかす、吉野太夫にデレデレと、愉快な面ばかり見せる秀吉ですが、酒好き福島が大きな枡を使っているのを見て何かに気付きました。

秀吉は昌幸のことをケンカ売ってんのかと、身もふたもない評価。
逆らってもしょうがないと言い含められていると、三成が登場しました。
秀吉にも嫌みな物言いをすると称される三成、安定です。
源次郎を盾にすっぽかしを誤魔化そうとする秀吉。
上杉はともかくどうしても大坂城に秀吉を戻したい三成。

それを見て大坂と秀吉を持ち上げつつ、城に戻す手助けをする源次郎。
春日や景勝をたらしこんできた如才なさをフルに発揮しています。
恐ろしい子です。

結局、上杉との面会は明日へと持ち越されました。どこまでも不憫な景勝です。

真田家、停滞

一方、上田城
催促の文を送ってきた秀吉について、対応を語らう真田父子。
秀吉の怒りを警戒する信之に、昌幸は強気の姿勢を崩しません。

「秀吉がなんぼのもんじゃい」

昌幸はまだ秀吉につくべきかと迷っています。
秀吉は信長に代わって天下を取る男なのか、そう疑問を持ちつづける昌幸に対し、毛利や上杉も秀吉についたと、現実に即したものの見方をする信之。

どちらにせよ待たれるのは、大坂に行った弟・源次郎の成果。
母の膝で愚痴をこぼしてしまった先週に引き続き、弟ばかりが頼られる現状に複雑な気持ちで歩く信之は庭で遊ぶすえと作兵衛を見つけます。

「戯れにわしの乳を吸わせてみた」

作兵衛がなんかすごいことを言っていますが、幸せそうなので何よりです。
すえと作兵衛に差し込む光は今回も輝かしいものでした。
「あまり吸わせない方がいいと思うがのう」突込みも元気なく立ち去る信之。

次に武具の手入れをする佐助を見つけます。
何か話を聞いてほしいのか、暇かと尋ねる信之に、空蝉の術を使ってなんか仕掛ける佐助。
出浦に弟子入りして、忍びの道を究めようと、自分のやるべきことに邁進する佐助。
出浦が火遁の術を使うと庭が炎上します。
結構な勢いに振り向く信之ですが、特に何も言わず去って行きます。
夕も暮れ、はけ口のない信之は、荒れた地面に気付きました。

信之には迷いを見せていた昌幸も、秀吉の権力に逆らうことはできないと悟っているのか、妻・薫には上洛をすることになりそうだと正直に言います。
徳川や北条が攻めてきても守ってくれるのならそれでいいと、素直に受け入れる薫。
夫の言うことを信じていたら身がもたないと、いつも何かと騒がしい母上も、二人の息子と夫のことについては穏やかな顔で母として妻としての役割を見せます。

「よき息子」源次郎の知らせを待つ昌幸に、息子は一人だけではないと、先週その膝に頭を任せていた嫡男について水を向けます。
その嫡男について、今はまだ、出番ではないという昌幸。

「荒れ果てた土地を再び耕し国を立て直す。その時こそあやつが役に立つのだ。あの生真面目さが」
「そんな世が早く来るとよいですね」

やわらかな光の中で、懸命に妻と荒れた庭を修復する信之。
昌幸たちの願う未来の姿を思わせるシーンでした。

石田三成大谷吉継

秀吉に約束を二日連続ですっぽかされてお怒りの景勝。
今日会って遊んできましたとは言えない源次郎。
会えたら、真田と秀吉の間を取り持つと、請け合う景勝に、何か言いたげな兼続の視線が刺さります。

石田家に戻った源次郎。きりちゃんと遠慮なくものを言い合います。

「いつもの源次郎さまが戻ってきた」

喜びながらきりちゃん、今日も落雁をほおばります。氏政とどっちがお菓子を食べているのでしょう。
真田の郷という田舎から出て来たきり、大坂がずいぶん楽しかったようで、はしゃいでいます。
足を崩していたきりも三成が来室してフレームアウトしているすきに姿勢を正していました。

石田三成大谷吉継の酒宴に同席する源次郎。

気の置けない二人の間柄が垣間見えます。
二人の昌幸への高評価に嬉しそうな源次郎。
どんなに恐ろしい人でも尊敬する父であることに変わりはない。
昌幸の「よき息子」発言と同じく、変わらない真田父子の関係が見えて嬉しかったです。

三成が詫びを言いにやってきた清正の対応に追われているすきに、源次郎はのちの義父と三成について語り合います。
不思議な人だと、三成がつかみきれない源次郎に、大谷は彼について解説をします。

秀吉にとって評価が高い人物だと分かった途端に源次郎への対応を改める。
悪く言えば無礼でよく言えば素直な三成。
そしてそれをフォローしてくれる大谷。
この二人の関係も、景勝や兼続のようなかけがえのない関係のようです。

秀吉と景勝、そして利休

6月14日。景勝は秀吉への拝謁を果たします。

秀吉の言葉に基本的にはだんまりで応える景勝。
源次郎の前での人のよさそうな笑顔はどこへやらです。
立て板に水のたとえの如く話を進める秀吉によって上杉の地は安堵され、内裏から位までいただいています。
しかし、真田への肩入れをやめろと迫られます。
昌幸の上洛拒否が祟って、家康に恩を売るついでに真田は見捨てられる寸前です。
黙り続ける景勝に代わって、兼続が加勢をするなということかと確認します。
その通り、と答えて秀吉、席を立ちました。

そばに控えていた三成、謙信の実子ではないと申し上げます。
「えっ、そうなの?」軽い感じで驚く秀吉。
今迄の性格悪そうな面々と違い、嫌みでそういうことを言うタイプではなさそうなので、根っからのおとぼけのようです。
余計たちが悪いと言えば悪いです。

自分の義のため景勝は秀吉の下にはつかないと強情を張りますが、景勝の性根を理解しきっている兼続は根気よく理を解きます。
真田に肩入れできない。自分の義が通せないことに苦しむ景勝。
源次郎には、強がりつつも本当のことが口に出せない景勝。
景勝へのフォローなのか、秀吉への紹介を「ものの見事に忘れてしまった」といい声でいう兼続がちょっとおかしかったです。

三成の心配りによって、したくも整えられてしまった源次郎。
茶の心得もないのに、お茶会に招かれます。

茶室の源次郎、奇妙に拳を固めている。と思ったら座敷が狭すぎて、膝が浮き、膝の上に置いた拳も浮き上がっているという寸法でした。

景勝が源次郎を秀吉に紹介するも、昨日に出会っていたことをバラされているところに、茶人・千利休の登場です。

景勝が無言で茶を飲む、長く重苦しいシーン。
しぶしぶと茶を手に取り、源次郎をうかがい、一度は脱力し、そしてようやく一口を含む。
茶に合わせて気持ちを飲みこむ上杉景勝の心情がこれでもかと押し出されます。

その姿に見たいものを見終えた秀吉、景勝と次は自分と緊張する源次郎に退室を促します。
二人がお茶を飲む様子を必死に横目で確認していた源次郎ですが、お相伴にはあずかれませんでした。

退室する時、膝の浮いた奇妙なかっこうのまま景勝に道を空ける源次郎。なかなか滑稽でした。

景勝が生涯で一番苦い茶を飲んでいる頃、きりはまずいまずいと急いでいる孫七郎と出会っていました。
寧に渡してくれと枇杷を託されたきり、どこか不安を誘う奇妙な音楽が響きます。
きりのよそいきのおしとやかさにやられたのか、でれっとした顔をした若者は、のちに関白となる秀次でした。

会合に走りこんでくる秀次への秀吉の値踏みするような目。
検地について尋ねられたときのたどたどしい返答への諦め。
秀吉の後継者となるはずの秀次が、すでに秀吉から厳しい評価を下されていることが感じられます。

その会合に何故か同席していた源次郎。秀吉に促され、ポンッ!と閃いた音と共に「枡の大きさを統一する」検地の仕方に思い至ります。

秀吉にものすごい気にいられた源次郎、そのまま茶々にも引きあわされます。
景勝の前で秀吉に既に出会っていたことがバラされたような形で、茶々にも既に出会っていたと秀吉にバレる源次郎。
「手が早いなあ」秀吉にだけは言われたくない評価が下ります。

信長公の妹の娘ださらっと紹介された茶々。
しかし源次郎、かつて見て強い印象だった信長のことを思い出しもしません。
過去の人に対し、ちょっと薄情です。

源次郎がビギナーズラックかポンポンと札を捲るすきに、茶々は部屋の外で控える若侍と視線を交えます。
その様子に気づき、じっと見つめる秀吉。
それに気づき思わず息をのむ源次郎。
競技に真剣な大蔵卿局の一喝で、その不穏な空気は解消されますが、源次郎の心には残ります。

秀吉の「手が早いな」は冗談だったのでしょうけれども、茶々と源次郎の間にそんな兆候が少しでもあれば、源次郎もあの恐ろしい視線にさらされていたのでしょうか。

 秀吉と家族、その団欒

最後に源次郎が連れてこられたのは穏やかな、秀吉の家族たちの団欒の場でした。

母性溢れる寧は手ずから食事をくばります。
その様子は本当に家族の団欒そのもの。

秀吉は子供がいなかったから血縁を大事にした、そう説明されます。

駆け込む秀吉も母や妻に絡んで楽しそう。

そんな団欒の席ですが、切腹に追いやられる人、謎の死を遂げる人と後の不幸が明かされ、幸せな風景は一気に意味を変貌させます。
この人たちにいったい何が起こってしまうのかと。

寧に招待されていたきりとも合流し、和やかな宴会に身を置く源次郎。

「どこにでもいそうな人」

天下人・秀吉を微笑ましそうに見つめるきりとは違い、源次郎はどこか硬い表情でつぶやきました。

「あんな人は見たことがない」

まとめ

先週は、大坂へ赴くことで、「秀吉の権力」を目の当たりにした源次郎。
対する今週は、権力の主「秀吉」本人に対面しました。

あれだけ大きな権力を持っているとは思えない気さくさと、時折のぞかせる底知れぬ恐ろしさ。
軽さと重さを見せる秀吉。
秀吉の周りの人々と秀吉の関わり方がどう転んでいくのか、恐ろしさとともに期待をせずにはいられません。

庭を修復する信之。苦渋の茶を飲む景勝。
音のないこの姿も、映像的に見ていておもしろかったです。

次回、真田丸 第十六回「表裏」

前回、真田丸 第十四回「大坂」

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